院外活動スタッフコラム

少年野球コラム②野球肘予防と身体機能テスト

2025.6.6

こんにちは。創成川通整形外科、理学療法士の清水です。

徐々に気温も暖かくなり,練習量や試合数が増え,ボールを投げる量や頻度も徐々に多くなっているかと思います。シーズンを通して怪我なくプレーするためには,柔軟性や筋力といった身体機能のチェックはとても大切です。

そこで今回はお子さんご自身でも実施できる簡単な身体機能テストと肘の投球障害について報告した研究を解説したいと思います。

 

1.対象
2年連続で小学生野球検診に参加した選手で初回検診時に肘内側部障害を認めなかった男子295名(2-5年生)を対象としています。質問紙による練習時間の聴取や医師・臨床検査技師・理学療法士によるメディカルチェックと後述する身体機能テストを実施し,2回目の野球検診時に肘内側部障害が新たに発生した選手と発生しなかった選手に違いがあるのかを調査しました。

 

2.身体機能テスト(初回検診時のみ実施)
・しゃがみ込みテスト
両手を腰のあたりで組んでお尻と踵が近づくまでしゃがみ込みをします。その際踵が地面から浮かずに最後までしゃがみ込みが出来た場合を良群,出来なかった場合を不良群としています。

・片脚立位テスト
裸足で両腕は体側に垂らした状態でスタートします。2m前方の目線と同じ高さを注視しながら片脚立位の保持時間を測定します。上体が大きくバランスを崩すことなく60秒間保持出来た場合を良群,出来なかった場合を不良群としています。

 

3.結果

2回目の検診時に新たに肘内側部障害が発生した選手は295名中72名でした。

しゃがみ込みテストは295名中269名が測定を実施しました。2年生と3年生において良群の肘内側部障害陽性率と不良群の肘内側部障害陽性率に有意な差があり,不良群で肘内側部障害が多い結果でした。

片脚立位テストは295名中265名が測定を実施しました。軸脚側,踏み込み脚側ともに良群と不良群に肘内側部障害新規発生率に有意な差はありませんでした。

 

4.結論

小学2-3年生でしゃがみ込みテスト不良群は,良群と比較して肘内側部障害の新規発生割合が有意に高い結果となりました。しゃがみ込みテストは簡易的に行える評価であり,2-3年生における肘内側部障害の発生リスクを予測するテストとして活用できる可能性があります。

 

しゃがみ込みテストは足首の柔軟性のチェックでよく用いられますが,足首をそらす動きに硬さがあると肩や肘への負担が増大すると言われています。もちろん投球障害には,柔軟性の低下以外にも投球フォームの崩れや投球数の増加なども関係してきますが,投球フォームは専門的な知識がある指導者や医療関係者などによる評価が必要なため,選手や保護者の方がチェックするのは難しいです。しかし今回ご紹介したしゃがみ込みテストは少しのスペースがあれば選手自身でもチェックすることが出来るため,投球障害のリスクを予測する一つの方法として,特に小学2-3年生の選手はぜひ実施してみてください!

 

【参考文献】

奥谷拓真ら. 小学生野球検診における身体機能テストと肘内側部障害の関連性についての縦断的調査 -簡易的な下肢機能テストを用いた評価-.

日本臨床スポーツ医学会誌.2024.

一覧はこちら

整形外科
整形外科

運動器疾患や外傷、各スポーツ障害による身体の痛みや機能障害を対象に、こどもから高齢者まであらゆる年齢層の骨関節・筋肉・神経の障害を治療します。

詳細はこちら

設備紹介
設備紹介

リニューアルオープン後、内装も綺麗になり、新たな設備を多く導入しました。

詳細はこちら

リハビリテーション科
リハビリテーション科

加齢に伴う変形性関節症などの運動器疾患やスポーツ障害などによる疼痛や機能障害に対して、運動療法と物理療法を併用し、症状の改善および再発の予防に取り組みます。

詳細はこちら